令和2年7月1日から自筆証書遺言を法務局で保管してもらう制度が始まりました。この制度については、弁護士コラム:【遺産相続】法務局における自筆証書遺言保管制度がつくられた理由をご確認ください。
さて今回は,相続人が法務局で保管中の自筆証書遺言を確認する方法について説明します。
相続人が法務局で保管中の自筆証書遺言を確認する方法
1 具体例
太郎さんは,生前に自筆証書遺言を作成しました。もっとも,遺言を自ら保管したり,相続人が家庭裁判所で検認手続をしなければならないのは面倒であると思いました(詳しくは弁護士コラム:【遺産相続】遺言書の検認をご確認ください)。
そこで,太郎さんは,法務局で確認したところ、遺言書は封筒に入れてはいけないと教わりました(詳しくは別記事弁護士コラム:【遺産相続】遺言書保管制度を利用するときは無封の遺言をご確認ください)。
また、太郎さんは、法務局から、遺言書保管官が本人確認するので、運転免許証を持参する必要があること、なければ事前に顔写真つきのマイナンバーカードを発行してもらうことも注意をされました。
太郎さんは、法務局で教わったとおりの準備を行い、遺言書を法務局で保管してもらっていました。
仮に,太郎さんは、生前、相続人の一人である花子さんに「自筆証書遺言は○○法務局で保管中である。」と説明していたとします。
この場合,花子さんら相続人が遺言書の存在を把握できます。
しかし,太郎さんが遺言書を作成したこと等を相続人に伝えていなかったとき,花子さんら相続人は遺言書の存在をどのように把握すればよいかが問題になります。
2 遺言書保管事実証明書の交付請求
遺言者の相続人等は,遺言者の死後,法務局の遺言書保管官に対し,遺言書保管事実証明書の交付を請求することにより保管中の遺言書の有無を調べることが出来ます(遺言書保管法10条1項)。
保管されている場合、遺言書保管事実証明書には、遺言者の氏名及び生年月日、遺言書に記載されている作成の年月日並びに遺言書を保管している保管所及び保管番号が記載されます。
これにより,花子さんは,太郎さんの死後,法務局に行って遺言書保管事実証明書を交付してもらえば,太郎さんの遺言書の有無を確認することができます。
ちなみに,手数料は1通につき800円になります。
また,提出書類としては,①遺言者が亡くなったことが確認できる戸籍謄本、②請求者の住民票、③請求者の運転免許証を持参することが必要です。
3 遺言書情報証明書の交付請求
ところで,花子さんは,太郎さんの遺言書が法務局で保管されていることを確認できたので,次のステップとして遺言書の内容を確認したいと考えたとします。
この場合,花子さんは,法務局で遺言書情報証明書(要するに遺言書の画像データー)の交付請求ができます(遺言書保管法第9条第1項)。
ちなみに,手数料は1通あたり1400円になります。
また,必要書類として,遺言者の全ての相続人が分かる戸籍(又は法定相続情報証明書)を準備しなければなりません。
4 遺言書の原本の閲覧請求
遺言書情報保管証明書は遺言の画像データーであるところ、相続人が遺言書そのものを確認したいというニーズもあります。例えば遺言書の筆跡を確認したい場合です。そこで、相続人は,遺言者の死後,法務局で,遺言書原本を確認することができます(遺言書保管法第9条第3項)。
ちなみに手数料は1回につき1700円です。事前に来庁日の予約が必要です。
5 遺言書保管官から他の相続人に通知
花子さんがこれらの請求を駆使して太郎さんの遺言書の内容を確認したとき,遺言書保管官は他の相続人等に対して当該遺言書を保管している旨を通知します(遺言書保管法第9条第5項)。そのため,遺言書保管官は,花子さん以外の相続人である,二郎さん,三郎さんに「○○法務局で太郎さんの遺言書を保管しています。」という趣旨の通知をすることになるのです。これにより,二郎さん,三郎さんは,自ら遺言書の有無を調査しなくても,太郎さんの遺言書の存在を知ることができるのです。
6 最後に
以上,法務局における自筆証書遺言の保管制度について,相続人が法務局で保管中の自筆証書遺言を確認する方法を中心に説明しました。
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