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弁護士コラム:【少年事件】少年法改正について

2022.02.19
1 はじめに

令和4年4月1日より,18歳・19歳の少年を「特定少年」と規定する改正少年法が施行されています。以下では改正少年法について説明します。

 

2 改正法の基本的な考え方

18歳、19歳の者(改正少年法では「特定少年」)は、選挙権および憲法改正の国民投票権が付与されることになりました。

また、民法上も、成年として位置付けられることになり、親権者による居所指定権、懲戒権、法律行為の取消権が及ばなくなりました(成人年齢引き下げについて詳しくは、弁護士コラム:【法改正】成年年齢引下げについてをご確認ください)。

このように、18歳、19歳の者は、社会において責任ある主体として積極的な役割を果たすことが期待される立場になった一方で、成長途上にあり、可塑性を有する存在であることから、少年法の適用対象として残したうえで、その立場に応じた特例を設けて、他の年齢層とは異なる取扱いをすることになりました(家庭の法と裁判36号18頁参照)。以下、具体的な内容について、特例の一部を説明していきます。

 

3 原則逆送の対象事件の拡大

改正前、故意致死事件が、原則として検察官に逆送されることになっていました(少年法62条2項1号)。
故意致死事件とは、例えば、殺人、強盗殺人、強盗致死、傷害致死、危険運転致死になります。

これに対し、改正法では、故意致死事件に加えて、死刑、無期・短期1年以上の懲役・禁錮に当たる罪も対象とされることになりました(少年法62条2項2号)。
そのため、現住建造物放火罪、非現住建造物等放火罪、建造物等以外放火罪、強制性交等罪、強制性交等致傷罪、強盗罪(事後強盗罪)、強盗致傷罪も、原則逆送事件に加わることになりました。

強制性交等罪の既遂犯は逆送になることが多いと考えられています。
もっとも、成人の場合は被害者の意向や犯罪の内容、示談や被害弁償の有無によって起訴猶予もあり得るので、成人とバランスから、既遂犯であれば逆送になるとは必ずしもいえないとされています(家庭の法と裁判38号11頁以下)。

他方、強盗罪については、少年法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議第1項において、「新たに原則逆送の対象となる罪の事件、とりわけ強盗罪については、様々な犯情のものがあることを踏まえ、家庭裁判所が検察官に送致するかどうかを決定するに当たり、適正な事実認定に基づき、犯情の軽重を十分に考慮する運用が行われるよう本法の趣旨の周知に努めること。」とされています。

 

4 特定少年に対する保護処分について

「特定少年」に対する保護処分については、「犯情の軽重を考慮して相当な程度を超えない範囲内において」しなければならないとされました(少年法64条)。

詳しくは、弁護士コラム:【少年事件】特定少年と保護処分をご確認ください。

 

5 虞犯の適用除外

虞犯とは、①家庭内での暴力、金銭の持ち出し等のように、実体法上は犯罪が成立しているが、被害届が出ないなどの理由によって手続上は犯罪と認められない事例(犯罪少年型)、②試験観察中に、無断外出、不良交友等の問題行動に及ぶ事例(問題少年型)とに大別されます(家庭の法と裁判No.36141頁)。

改正前の少年法ではは、18歳・19歳の虞犯少年についても少年院送致を含む保護処分をすることできました。
これに対し、改正少年法では、特定少年については虞犯規定が適用されないことになりました(少年法65条1項)。
これは、特定少年は成人と扱われるので保護原理に基づき国家による介入を認めるべきでないという考え方に基づきます。

 

6 推知報道の制限の緩和

犯行時18歳以上の者による事件が検察官送致後に公訴提起され、公開の法廷で刑事責任を追及される立場になった場合、その段階から推知報道禁止は解除されることになりました。

注意しなければならないのは、犯行時18歳未満であった場合や、事件直後や家裁審判の段階では、推知報道禁止は解除されないことです(家庭の法と裁判36号29頁)。また、不起訴処分の場合、略式起訴の場合も解除されません。

少年法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議では「特定少年のとき犯した罪についての事件広報に当たっては、インターネットでの掲載により当該情報が半永久的に閲覧可能となることをも踏まえ、いわゆる推知報道の禁止が一部解除されたことが、特定少年の健全育成及び更生の妨げとならないよう十分配慮されなければならないことの周知に努めること」とされました。

これを受けて、最高検は、令和4年2月8日付け最高検察庁総務部長事務連絡「少年法等の一部を改正する法律の施行に伴う事件広報について」において、「基本的な考え方としては、犯罪が重大で、地域社会に与える影響も深刻であるような事案については、特定少年の健全育成や更生を考慮しても、なお社会の正当な関心に応えるという観点から氏名等を公表することを検討すべきものと考えられます。例えば、裁判員制度対象事件については、一般的・類型的に社会的関心が高いといえることから、公判請求時の事件広報に際して氏名等を公表することを検討すべき事件の典型であると考えられます。」との考え方を示しています。

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