1 金沢地裁令和元年12月20日(自保ジャーナル2085号81頁)
事故後減収がない会社員の後遺症逸失利益が問題となりました。
差額説からすれば,事故後減収がない場合は後遺症逸失利益は認められないことになりそうです。
しかし,裁判例の多数は純粋な差額説は取っておらず、様々な要素を考慮して,後遺症逸失利益を認めています。
金沢地裁判決でも、事故後減収がないことは本人の努力によるものであると認定され、後遺症逸失利益が認められました。
2 考慮要素
では,事故後減収が無い場合,どのような考慮要素のもとで後遺症逸失利益を認めているのでしょうか。
一般的には,①昇進・昇給に影響があったこと(将来そのおそれがあること),②業務への支障,③退職・転職したこと,④本人の努力,⑤周囲の協力(職場の配慮),⑥日常生活の支障,⑦将来の減収のおそれ,将来の不利益が考慮されています。
裁判例では以上の考慮要素のうち,②,④,⑤が考慮されることが多いとされています。
④本人の努力とは,例えば業務上の工夫,トレーニング,リハビリや通院,休日出勤といったことが考えられます。
実際に,後遺障害14級の自営業者の方で,差額説を前提にすると損害が認められない事例において,②④を主張立証したことにより後遺症逸失利益が認められました。詳しくは,弁護士コラム:【交通事故】減収がない場合でも後遺症逸失利益を獲得した事例をご確認ください。