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弁護士コラム:【交通事故】主婦の休業損害

2020.10.29
1 はじめに

例えば,主婦の方が交通事故に遭い,怪我をされたとします。
この場合,主婦の方はこれまで行ってきた家事の一部ができなくなり,代わりに家族に手伝ってもらうことがあります。
あるいは,これまで1日あたり2時間かかっていた家事が,1時間多くかかるようになったり,辛い思いをしながら行わなければならなくなることがあります。
このように家事労働ができなくなったりすることも,休業損害として評価されます。
この家事労働の休業損害のことを,家事休損と呼ぶことがあります。

 

2 主婦の基礎収入

まず、専業主婦(女性)の基礎収入は、事故発生時の賃金センサスの女性の学歴計・「全年齢」で計算します。

また、兼業主婦の基礎収入は,現実の収入と賃金センサスを比較して、大きい方が基準となります。詳しくは,別記事弁護士コラム:【交通事故】兼業主婦の休業損害をご参照下さい。

さらに、高齢者の基礎収入は、賃金センサスの女性の学歴計・「年齢別」平均賃金を基準に計算する裁判例、そうでなく全年齢の平均賃金を基準に計算する裁判例と分かれています。高齢者とはおおむね65歳~70歳以上を意味します。前者の裁判例は、一般論として、高齢者の場合は体力が落ちているので、高齢者以外と比べて家事労働に対する金銭評価に差をつけるべきであるという考え方に基づくと思われます。

では、男性が家事労働を行っていた場合(いわゆる専業主夫)はどうでしょうか。
例えば,サラリーマンの夫が病気を患い稼働することができなくなったので,妻が外に働きに出て,夫が主に主婦業を行っていた場合,夫に家事休損が認められるかという問題です。
例えば,裁判例では、夫婦で年金収入で暮らしていたところ、妻が股関節の手術を受け、10分も立ち続けることができないため、夫が妻の家事に従事していた事例において、夫において女性と同じ基準で家事休損を認めました(大阪地裁令和3年5月26日)。

ちなみに、一人暮らしの場合,家事休損は認められるでしょうか。
例えば、被害者がお年寄りの女性で、すでに夫が亡くなり、子どもたちは別に暮らしていた場合、休業損害は認められるかという問題です。
結論としては認められません。
理由はとしては,専業主婦の休業損害が認められるのは自分以外の者に対して家事労働を提供することに金銭的な価値が存在することにあるところ、一人暮らしの場合,自ら生活していくため日常活動であり、誰かに家事労働を行ったとはいえないからです。

 

3 家事労働制限の事実認定

①被害者が事故前にどれだけ家事をしていたのか(被害者の負担する家事の内容)
②家事はどれだけ出来なくなったのか(労働制限の度合い)
の順番で整理していくのが分かりやすいと思われます。実際、裁判例でも、このような順番で審理判断していることが多いです。

①は、
・被害者の年齢
・被害者の事故前の身体の状態
・同居家族の人数
・同居家族の属性(例えば、未成熟子がいれば家事負担が大きい。他方で、中学生以上だったら家事負担は小さい。同居の家族が社会人が日中仕事してたら被害者にかかる家事負担は大きい)
を考慮することになります。

裁判例では,被害者の主婦が成人の娘さんらと同居していたケースにおいて,保険会社は「成人の娘さんらのサポートもあったので家事労働の制限の度合いは大きくない」と主張していました。
これに対しては,娘さんらはフルタイムの仕事をしていたので、被害者の家事労働をサポートすることは物理的に不可能であったと主張するとともに、それを裏付ける客観的資料として娘さんらの給与明細や雇用契約書を提出するなどして反論することが考えられます。

②は、
・傷害の内容・程度(例えば、怪我の部位が利き腕と反対だったら家事労働の制限は少ないといえる。顔の醜状痕だけだったら家事労働の制限はなかったとも評価しうる。)
・後遺症の有無・内容(例えば、後遺症がつくほど大きな怪我であった、家事労働の制限は大きかったと評価しうる。)
・事故衝撃の度合い(例えば、衝撃が大きいと家事労働の制限が大きかったと評価しうる。詳しくは弁護士コラム:【交通事故】追突事故による衝撃の程度をご確認ください。)を考慮することになります。

また、裁判例では、兼業主婦の場合は減収の有無も考慮されます。減収がない場合は家事労働の制限がなかったとする方向で考慮されます。

裁判例では,診療録上、被害者が治療期間中にバレーボールをしていたことも考慮され,家事労働の制限度合いは低いとされたケースがあります。

 

4 家事労働が制限された期間

事故日から症状固定日までの期間については,3の検討を踏まえて、次のような考え方により、制限されることになった家事労働の期間を計算します。

具体的には,
①通院期間全体の20~30%と計算する考え方
②事故直後は80~100%とし、その後に割合が逓減する考え方
があります。

例えば、むちうちの場合、「交通事故による頸椎や腰椎の捻挫による症状は、受傷直後に最も強く、組織損傷の修復に伴って経時的に改善するのが通常である」という経験則からすれば、②が論理的と思われます。

 

5 最後に

以上、主婦の休業損害についてご説明しました。
交通事故でお困りの方はイーグル法律事務所までご相談ください。

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