1 はじめに
脳脊髄液漏出症の場合,治療期間が長期にわたり,症状固定までに相当な年月を要することになります。
そのため,加害者側の保険会社との間で症状固定について見解の相違が生じることもあります。すなわち,被害者としては症状固定に至っていないので引き続き治療を続けたいと考えているとしても,保険会社としては,すでに症状固定しているので,後遺障害認定申請→示談と話を進めるべきである,として対立することがあるのです。
話が平行線となれば,保険会社側は,被害者に対し,民事調停を申し立て,調停が不成立となれば債務不存在確認訴訟を提起してくることがあります。
そうすると,被害者側は治療方針などについて対応を迫られることになります。
以下,具体例をもとに説明していきます。
2 ある事例の訴訟進行
被害者は,脳脊髄液漏出症と診断され,治療を継続していました。
ところが,保険会社は症状固定に至っているとして,まずは民事調停を申し立て,調停が不成立となった後,債務不存在確認訴訟を提起することになりました。
被害者は,訴訟係属中,主治医とも相談した結果,症状固定とし後遺障害認定手続に移行することになりました。
その上で,裁判所には今後の流れや後遺障害認定結果が出るまでの所要期間を説明したところ,理解を得ることができました。
もっとも後遺障害認定結果が出るまでに相当期間を要します。
裁判所としては,その間裁判を進めないわけにもいかないとのことで,後遺障害以外の争点,例えば過失割合,基礎収入などについて並行して審理を進めていくことになりました。
その後,自賠責調査機構の結果が出ました。当方が主張していた脳脊髄液漏出症は認められず,後遺障害14級が認定されるにとどまりました。
そこで,当方は異議申立てを行うことになりました。
当方は,異議申立てに際し,裁判所に対し,裁判所異議申立ての必要性を説明し,異議申立ての際に提出する意見書等を証拠提出しました。
これにより,訴訟の進行は結果が出るまで事実上ストップすることになりました。
異議申立が棄却された後,当方は加害者に対し反訴を提起することになりました。
なお、反訴提起後,加害者側は、債務不存在確認訴訟について訴えを取り下げることはしませんでした。これについては、弁護士コラム:【民事】債務不存在確認の訴え取下げをご確認下さい。
最終的には,当方に有利な内容で和解成立で訴訟終結となりました。
3 最後に
以上,脳脊髄液漏出症の場合,訴訟の進行も通常のケースとは異なる展開となることがあります。
脳脊髄液漏出症について、弁護士コラム:【交通事故】追突事故による脳脊髄漏出症についてをご確認下さい。
交通事故でお困りの方は,イーグル法律事務所までご相談ください。