1 はじめに
今回は,交通事故に遭った被害者の方が労災保険の休業補償給付を受ける場合についてご説明します。
2 休業補償給付と特別支給金
例えば,被害者が仕事の帰りに信号待ちしていたところ,追突事故にあったとします。
この場合,被害者は労災保険を利用することができます。
被害者は、労災保険から、休業補償給付を受けることができます。
給付額は3ヶ月間の平均賃金の60%に相当する金額になります。
また,被害者は,休業補償給付だけでなく,特別支給金として平均賃金の20%に相当する額を受け取ることができます。
3 特別支給金は損益相殺の対象外
ところで,特別支給金は,労災保険の社会復帰促進等事業に基づき支給されるものです。
特別支給金の性質は,業務災害や通勤災害に関する保険給付の実質的な上乗せ給付としての性質を有するとされています。
このような性質から,特別支給金は損益相殺の対象とはならないと考えられています。
そのため、被害者は、加害者側に対し,休業損害として,休業補償給付を控除した40%相当額を請求することができます。
4 具体例
例えば,被害者の3ヶ月間の平均賃金が30万円,3か月間休業したとします。
この場合,被害者が,労災から,休業補償給付として30万円×60%×3か月=48万円を受け取ることができます。
また,被害者が,特別支給金として,30万円×20%×3か月=18万円を受け取ることができます。
そして,この18万円は損益相殺の対象とはなりません。
仮に労災事案でないとすれば,被害者は,加害者側に対し,30万円×3か月分=90万円を請求することができます。
そうすると,被害者は,加害者に対し,90万円-48万円(休業補償給付)=42万円を請求することができます。
よって,被害者が休業損害としてもらえるお金は,48万円(休業補償給付)+18万円(特別支給金)+42万円(休業損害)=108万円になります。
このように,被害者は,労災保険を利用することにより,実際に被った休業損害よりも,多くの補償を受けることができます。
5 まとめ
以上からして、交通事故の被害者は、追突事故など自身に過失がない場合でも、労災保険を使える場面では,労災保険を使うべきです。
交通事故でお困りな方はイーグル法律事務所までご相談ください。