1 事例
甲は,生前,乙に対し全ての遺産を遺贈する旨の遺言を作成しました。
丙は,遺留分を有しています。
甲が亡くなった後,丙は,乙に対し,遺留分侵害額請求(改正前は遺留分減殺請求)をしました。
乙は,その時点で,支払い不能状態にありました。
そのため,乙は,遺留分侵害額請求を受けた約1か月後,自己破産申立てを行い,破産開始決定が出ました。
この場合,相続法改正前(遺留分減殺請求)と改正後(遺留分侵害額請求)とで,丙の地位は異なるかが問題となります。
2 改正前(遺留分減殺請求)について
この場合,遺留分減殺請求をした受遺者等と遺留分権利者は不動産を共有することになります。
そのため,遺留分権利者は当該不動産について共有持分権を有していることになります。
当該共有持分権は遺留分権利者の財産であり,破産者の財産ではありません(つまり破産財団には入らない)。したがって,遺留分権利者は共有持分権を売却するなどにより金銭化することができます。
事例では,丙は,不動産の共有持分権を譲渡するなど換価することができます。
3 改正後(遺留分侵害額請求)について
遺留分侵害額請求をすると,遺留分は金銭債権となります。
事例では,破産開始決定前に発生した債権なので,破産債権となります。
そうすると,丙は,破産管財人が当該不動産など破産財団から財団債権などを控除した残額に対し配当を受けることしか出来ません。
つまり,丙は,配当原資がなければ配当を受けられませんし,配当率によっては僅かな金額しかもらえない可能性があります。
4 最後に
以上,遺留分侵害額請求の相手方が破産した場合についてご説明しました。
遺留分についてお困りの方はイーグル法律事務所までご相談ください。