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弁護士コラム:【交通事故】事業所得者の休業損害

2020.10.04
1 はじめに

事業所得者が交通事故に遇った場合、休業損害が問題となります。
以下では、事業所得者の休業損害の計算方法について説明していきます。

 

2 事業所得者とは

事業所得者とは、商・工業、農林水産業、サービス業、その他いわゆる自由業(農家、開業
医、作家、スポーツ選手、ホステス、弁護士)などに従事する者で、個人名で事業を営む者をいいます。

 

3 基礎収入

事故前年の確定申告所得額によって認定することになります。

青色申告をしていた場合、青色申告特別控除(65万円)を受けられます。これは、所得額に加算することになります。というのも、青色申告特別控除は、課税上の特典であり、実際の経費ではないからです。

固定費は、休業中であるかにかかわらず事業の維持、存続のために必要な経費なので、休業損害に含まれます。そのため、基礎収入は、所得額に固定費(但し実際に支出した費用に限る。)を加算した金額となります。
ここで固定費に含まれるのは、例えば、地代家賃、租税公課、損害保険料、リース代、減価償却費などになります。

 

4 休業日数

「個人事業主は、自らの裁量で業務時間や業務方法を調整することが可能であるから、通院をしたからといって、そのことのみで収入が減るものではない」(名古屋地裁令和4年3月30日、自保ジャーナル2127号)という特性があります。

逓減方式で算出するケースが多いと思われます。
すなわち、負傷の程度・回復の度合い、職業内容、休業期間などを考慮し、収入日額の一定割合に減じた額をもとに計算をして、積算して治療期間中の損害額を算出する計算方法になります。
例えば、事故後一定期間は100%、その後症状固定までの期間は一定の割合の労働能力を喪失したとして計算します。

 

5 確定申告の所得よりも実際の収入が多いと主張する場合

この場合の基礎収入の算定については考え方が分かれています。

一つには、確定申告書に記載した所得を基準に計算するべきである、とする考え方があります。
これは、実態よりも低い金額で申告しておきながら、交通事故の場面では所得がもっとあると主張するのは都合が良すぎるという価値判断に基づきます。

しかし、これに対しては、価値判断としてはそうかもしれないが、実態とかけ離れた申告は修正申告で対処すべき問題である、税金の問題と交通事故の賠償の問題とを一緒くたに考えているといった批判があります。

そこで、別の考え方として、確定申告書は基礎収入算定のための有力な資料の一つにすぎない、他の資料から基礎収入を算出する余地が認められるべきであるといった考え方を前提に、確定申告書の所得とは異なる基礎収入を得ていたことについて高度の蓋然性が認められるのであれば、その金額が基礎収入とされるべきである、とする見解もあります。

過去に扱った同種事例では、まさに上記の考え方に基づき、もろもろの資料を収集のうえ丁寧に立証したところ、休業損害と後遺症逸失利益が保険会社の当初提示価額から大幅に増額しました。

 

6 最後に

以上、事業所得者の休業損害について説明しました。
交通事故でお困りの方はイーグル法律事務所までご相談ください。

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