1 遺留分を剥奪させたい場合
被相続人の中には,相続人の一人に自分の遺産を相続させたくたいと考える方もおられます。
例えば,父は,二男から長年にわたり侮辱や暴力を受けていた場合,二男に1円たりとも相続させてたくないと思う場合もあります。
このような場合,父は,すべての遺産を長男に相続させる旨の遺言を残せばよいとも思われます。
しかし,二男に法定相続分の2分の1の遺留分が認められます。
そこで,二男の遺留分をも失わせる方法である、推定相続人の廃除という方法について説明します。
2 推定相続人の廃除とは?
推定相続人の廃除は,推定相続人が被相続人に対して虐待や侮辱をした場合,その遺留分を含む相続権を剥奪する制度です。
この定義からすると,兄弟姉妹は遺留分が認められないので、兄弟姉妹の廃除は認められません。
3 廃除を認めた審判は多くない
廃除は相続分を奪うという強力な効果を持ちます。そのため,裁判所は簡単に廃除を認めないと言われています。
実際,廃除を認めた審判例は多くはありません。認容例は5件に1件程度と思われます。
4 生前の廃除を検討するべき
被相続人は,生前に廃除の請求を行うことが出来ますし,遺言に廃除する旨を記載することが出来ます。
遺言による廃除の場合,廃除の請求は,遺言執行者が行うことになります。
ところで、遺言による廃除の場合,遺言執行者が,推定相続人が生前に虐待や侮辱をしていた事実を基礎付ける証拠を収集する必要があります。
しかし,それは極めて困難な作業と言えます。推定相続人から事情を聞くことができればよいですが,すでに亡くなっているので,証拠がないことが多いためです。
そうすると,遺言による廃除の場合は,立証の観点からして,廃除のハードルが高いといえます。
このように,推定相続人の廃除を検討されている方は,生前,推定相続人による虐待や侮辱の証拠収集をしたうえで,廃除請求を行うのが肝要です。
5 代襲相続がある場合は廃除の実益なし
推定相続人の廃除が認められたとしても、その推定相続人に子がいる場合、子(被相続人からみて孫)が代襲相続することになります。そのため,このような場合は廃除する実益はあまり認められないことに注意が必要です。
6 夫婦関係にある相続人の廃除
裁判例では、離婚原因である婚姻を継続し難い重大な事由と同程度の非行がなければ廃除は認められないとされています(大阪高裁令和2年2月27日決定)。
7 最後に
推定相続人に相続させたくない方がいる場合、一度イーグル法律事務所までご相談ください。