相続法改正~遺言執行者の預金払戻権限
1 具体例
太郎さんは,生前,長男二郎さんに全ての預貯金を相続させ,遺言執行者を二郎さんに指定する旨の自筆証書遺言書を作成しました。
二郎さんは,太郎さんの死後,遺言執行者に就任しました。
二郎さんは,太郎さんの死後,亡太郎さん名義の預貯金を解約しようと金融機関の窓口に行きました。
そうしたところ,金融機関は「遺言執行者に預金の払戻し等の権限はあるのだろうか?遺言書にも書いていないし・・」と疑問を持ち,すぐには解約手続をしてもらえませんでした。
2 問題の背景
公正証書遺言であれば,公証人が作成に関与するので,遺言書に「遺言執行者は預貯金の払戻しや預貯金契約の解約の申入れを行う権限を有する。」という趣旨の規定(以下「預貯金の払戻し等の権限規定」といいます。)が定められるのが通常と思われます。
また,自筆証書遺言の場合であっても,弁護士などの専門家が作成に関与していれば,預貯金の払戻し等の権限規定を設けることが一般的です。
しかしながら,遺言者ご本人が自筆証書遺言を単独で作成する場合,そこまで気が回らずに預貯金の払戻し等の権限規定を設けていないことがあります。
そのため,具体例のような問題が生じることになるのです。
3 制度の説明
改正法では,特定の相続人に預貯金を相続させる旨の遺言がされた場合,遺言執行者は預貯金の払戻し等の権限を有するとなりました(民法第1014条第3項本文,第4項)。
遺言者が特定の相続人に預貯金を相続させ,かつ遺言執行者を指定していた場合,遺言者は遺言執行者に預貯金の払戻し等の権限を付与する意思を有することが多いと思われます。改正法は,このような遺言者の意思を推定して,遺言執行者に預貯金の払戻権限を付与することにしたのです。
4 最後に
以上,遺言執行者の預貯金の払戻し等の権限を付与権限についてご説明しました。
遺言についてお困りの方はイーグル法律事務所までご相談ください。