1 はじめに
相続法改正により、特別寄与料の支払請求(民法1050条)が創設されました。
例えば、夫の妻が義理の父の療養看護を長年にわたって行ってきた場合、妻に正当な対価を請求する権利を付与する制度になります。
今回はこの制度が新たに設けられた理由を説明します。
2 典型的なケース
太郎さんは、要介護状態にありました。そのため、息子二郎の奥さんであるサクラさんが太郎さんを長年にわたり在宅介護してきました。
二郎さんが太郎さんよりも先に亡くなりました。二郎さんとサクラさんの間には子いません。
サクラさんが太郎さんの遺産を取得することができるかが問題となります。
3 遺産分割ではどのように扱われるのか?
「相続人」が被相続人の療養看護等の貢献をした場合に寄与分が認められます。
サクラさんは相続人ではありませんが、相続人である二郎さんの履行補助者と評価することにより、サクラさんの療養看護の労を正当に評価することは可能です。
しかし、二郎さんは太郎さんよりも先に亡くなり、二郎さんとサクラさんの間に子いない場合、太郎さんの遺産分割においてサクラさんの労苦を考慮することはできません。
そこで、相続法改正前、サクラさんは、以下のような方法により、相続財産の中から療養看護に相当する対価を得ることが考えられます。
4 準委任契約に基づく請求
サクラさんは太郎さんとの間で療養看護について報酬の取り決めをすること(法律的には準委任契約の締結といいます。)が考えられます。
これにより、サクラさんは生前太郎さんに報酬請求し、死後は太郎さんの相続人に対し(未払い分の)報酬請求をすることができます。
しかし、親族間でわざわざこのような契約をする人はいないですし、サクラさんにこのような取り決めを求めることは酷といえます。
5 遺贈
サクラさんは、生前、太郎さんに、「サクラに○○を遺贈する」という遺言書を作成してもらうこと(法律的には遺贈といいます)が考えられます。
これにより、サクラさんも相続財産の中から遺産を取得することができます。
しかし,太郎さんが自発的に遺贈をしてくれればよいですが、そうでなければサクラさんは太郎さんに「私のために遺言を書いて下さい。」と促さなければいけません。サクラさんに酷な要求といえるでしょう。
6 養子縁組
サクラさんは、太郎さんとの間で養子縁組をすることが考えられます。
これにより、サクラさんは相続人として遺産分割に参加し、遺産を取得することが出来ます。
しかし、太郎さんが自発的に養子縁組をしない場合、サクラさんは太郎さんに「私のために養子縁組して下さい。」と促さないといけません。サクラさんに酷な要求といえるでしょう。
7 特別寄与料の支払請求の創設
サクラさんのように被相続人の療養看護など特別な貢献をした人が何も受け取れないのは不公平といえます。
そこで、サクラさんのような人に相続財産から一定の分配を受けられる制度を新たに設ける必要性があります。
他方、被相続人としても、サクラさんのような人に対し,その労を報いるために相続財産の中から一定の財産を与える意思を有しているのが通常といえます。
そこで、被相続人の療養看護など特別な貢献をした相続人以外の者に対し特別寄与料の支払請求権を付与する制度が設けられました。
これにより、サクラさんは、太郎さんの相続人に対し特別寄与料の支払請求し、一定額の支払いを受けることができるのです。
8 最後に
以上、特別寄与料についてご説明しました。
お困りの方はイーグル法律事務所にご相談ください。