1 条文
民法は、後見人の解任について、「後見人に不正な行為、著しい不行跡その他後見の任務に適しない事由があるときは、家庭裁判所は、後見監督人、被後見人若しくはその親族若しくは検察官の請求により又は職権で、これを解任することができる。」と定めています(民法846条)。
このように、文言上、解任事由の有無と解任の可否が区別されているので、個別に検討する必要があるとされています。
2 解任事由の有無
解任事由の有無を判断するに際しては、不正を働いた疑いのある成年後見人の財産管理権を失わせる措置を講じた上で、専門職後見人や家庭裁判所調査官が事実関係について調査をすることになります。財産管理権を喪失させる手段としては、専門職後見人等を追加選任し、権限分掌することが多いようです。
ちなみに権限分掌について、民法では、「成年後見人が数人あるときは、家庭裁判所は、職権で、数人の成年後見人が、共同して又は事務を分掌して、その権限を行使すべきことを定めることができる。」と定められています(民法859条の2第1項)。
3 解任の要否
民法846条は、「家庭裁判所は、・・・これを解任することができる。」という文言となっています。そのため、家庭裁判所としては、諸般の事情を考慮し、当該不正を働いた後見人を解任するのか、それとも解任せずに身上監護のみの後見人を続けてもらうのかを審査することになります。
諸般の事情としては、被害額の多寡、被害弁償の有無、本人と後見人との関係性、身上監護面において親族後見人が果たす役割などの事情が挙げられるとされています。