一般論として、相続放棄の意思表示について、錯誤を理由に取り消すことができます(民 919条 2 項)。もっとも、裁判例では、法律行為の基礎とした事情についての錯誤にすぎず、その事情をに関する認識の表示がなされていないとして取消しが認められない場合があります。
例えば、最判昭40年5月27日 では、相続人は、他の相続人も相続放棄すると考えて相続放棄をしたが、予想に反して他の相続人は相続放棄しなかった場合について、相続放棄の取消しを認めませんでした。
また、最判 昭和30年9月30日では、相続人は、相続放棄することにより相続税が軽減されると信じて相続放棄をしたが、予想に反して相続税が増えてしまったという場合について、相続放棄の取消しを認めませんでした。