破産者の養育費の支払いが否認権行使の対象となるか問題となります。一般的には、破産手続開始決定前の期間の養育費の支払い、破産手続開始決定後の期間の養育費の支払いとで分けて検討されています。
まず、破産手続開始決定前の期間の養育費の支払いについてです。未払の養育費請求権は破産法上は一般破産債権であり、財団債権ではありません。したがって、養育費請求権が非免責債権といっても、その支払いによって破産財団が減少し、破産財団が減少し他の債権者への配当が減少する結果になるので、偏頗弁済になるとする考え方もあります。
しかしながら、養育費は、破産法上、非免責債権とされており、その趣旨は養育費が子ども生存権などの実現に資する重要な権利であり、強く保護する必要があることにあります。そうであれば、養育費請求権は一般債権よりも優遇される権利と解するべきです。したがって、不相当に多額であったり、累積して巨額になっていなければ、不当性がなく、偏頗行為否認の対象とはならないとされています。
次に、破産手続開始決定後の期間の養育費の支払いについてです。破産手続開始決定後の期間の養育費請求権は手続外債権であり、新得財産から支払うべきものを開始決定前に支払うことにより破産財団を減少させたことになるので、詐害行為否認の対象になるとする考え方があります。他方で、具体的事案に応じて不当性の要件に該当せず、そのため否認対象行為にならないとする考え方もあります。