例えば外貌に著しい醜状を残した場合、7級となります。しかし、未婚女性の場合、高齢の既婚婦人とで、支払われる金額に変わりはありません。
また1上肢の用を全廃した場合は5級となりますが、利き腕であるか否かは、保険金の額に影響しません。
さらに1手のひとさし指、なか指または薬指の用を廃した場合は12級になりますが、被害者がピアニストだとしても、そのことは保険金の額に影響しません。
このように自賠責保険の後遺障害制度は個別事情を考慮しないので、被害者が個別事情に則した被害救済を求める場合は、対人賠償保険の担当者との示談交渉、交渉が決裂した場合は裁判で実現するほかありません。
もっとも、特に交渉の場合、被害者の方が損害査定のプロである損保会社の社員と対等に交渉することは難しいです。損保会社の社員は、賠償すべき範囲を自賠責保険の範囲内に収め、対人賠償保険から支払いがないように納めること、支払うとしても最小限に抑える立場にあります。そのため、被害者は十分な被害弁償を受けられない可能性があります。そこで、被害者も、費用対効果の問題がクリアできれば(例えば弁護士費用特約)、弁護士に交渉を依頼したほうがよいと思われます。