神戸地裁令和3年9月30日(自保2109号)では、被害者は、①左足第1から5指の機能障害(「1足の足指の全部の用を廃したもの」、後遺障害等級9級)、②左臀部から下腿の痛み及び異常知覚等の症状(「局部に頑固な神経症状を残すもの、後遺障害等級12級」)などの後遺症(併合8級)が残りました。
原告側は、後遺障害等級8級を前提に労働能力喪失率を45%と主張しました。これに対して被告側は、時間の経過とともに、症状への馴化、代償性動作の獲得、筋力の回復などにより、代償機転が働くことが十分に想定されるとし、症状固定から一定期間経過後の労働能力喪失率は20%程度であると主張しました。
裁判所は、①仮に症状の馴れ等により多少代償性動作の獲得が見られたとしても、明らかな労働能力の回復が見られる蓋然性が高いとは直ちにいうことはできないこと、②症状固定から3年半程度経過した本人尋問の結果を踏まえると、原告の後遺障害は時間の経過とともに容易に症状への馴化が見られる状態ではないと判断しました。