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弁護士コラム:【遺産相続】不動産登記法の見直し

2021.08.18
1 はじめに

令和3年4月21日、不動産登記法の一部を改正する法改正がなされ、同月28日公布されました。施行日は後述のとおり先の話ではありますが、重要な法改正のため、説明します。

2 相続登記の申請義務化

相続により不動産を取得した相続人は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日から3年以内に相続登記(法定相続分での相続登記)の申請をすることが義務化されました(不動産登記法76条の2)。

このように、これまでは相続登記をしてもしなくてもよかったのが義務化されることになりました。これに実効性を持たせるため、上記期間内の申請を怠った場合、違反者は10万円以下の過料に処されことになります。

そもそも相続登記が義務化された背景には、相続登記未了、住所変更登記未了の土地(建物)が発生するのを防止することにあります。このような所有者不明不動産は現在の所有者を特定する手間とコストを要し(住民票や戸籍を調査すれば所有者を特定することは可能だが、数代にわたり相続登記がなされていない不動産の場合は相続人が100人を超えるケースもあり、不動産の価値が低ければ手間とコストをかけてまで所有者を特定するインセンティブが働きにくい)、それが土地(建物)の有効活用の足かせとなってるのが現状です。この現在発生している不都合が将来発生しないため、今般、相続登記が義務付けられることになったのです。

3 相続人申告登記

これまで相続登記がなされなかった理由は、相続登記が任意であり、しなくても不利益がなかったことだけでなく、相続登記が煩雑だったこともあります。今回、相続登記が義務化されることになりましたが、義務化されただけでは、相続登記が煩雑である点はなんら解消されません。また、相続登記はしなくてはいけない、しかもその手続はとても大変だとなれば、公の納得は得られないと思われます。そこで、相続登記の義務化というムチとともに、相続人申告登記というアメがセットで設けられることになりました。

相続人申告登記とは、①所有権の登記名義人について相続が開始したことと、②自らがその相続人であることを2の期間内に登記官に申し出ることにより相続登記の申請義務を履行したとみなすものです(不動産登記法76条の3)。

申出に際しては、当該相続人が被相続人の相続人であることがわかる戸籍謄本を提出すれば足り、他の相続人の存否を確認するために被相続人の出生から死亡に至るまでこ戸除籍謄本を提出するこことまで必要ないとされています。そのため、例えば、婚姻関係にある夫婦で、夫が亡くなった場合、妻は自身の戸籍を提出すれば足ります。

4 所有不動産記録証明制度

例えば、被相続人が全国に土地を所有していたとします。この場合、相続登記が義務化された状況の下では、相続人はすべての土地について相続登記をしなければなりませんが、その前提として相続人はすべての不動産を把握していなければなりません。被相続人が生前に相続人に伝えておけば問題ありませんが、必ずしもそうとは限りません。相続人にすべての不動産の調査義務を課すのは余りにも酷といえます。また、このまま何も手当てをしなければ、見逃された土地について相続登記がなされないまま放置されてしまうおそれがあります。

そこで、改正法では、登記官が、被相続人が所有権の登記名義人として記録されている不動産を一覧的にリスト化し、証明する制度が設けられることになりました。これが所有不動産記録証明制度になります(新不動産登記法119の2)。

5 施行日

相続登記申請義務化は公布の日から3年以内、所有不動産記録証明制度は公布の日から5年以内に施行されることになります。

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