1 はじめに
令和2年4月から改正された財産開示手続が施行されています。手続について概略を説明します。
2 債務名義の種類の拡張
改正前は限定していましたが、改正後は、調停調書、執行証書、支払督促での申立ても可能になりました可能に(197条1項)。
3 罰則強化
開示義務者が正当な理由なしに出頭しなかった場合の制裁について、改正前は30万円以下の過料にとどまっていましたが、改正後は6月以下の懲役又は50万円以下の罰金罰金が科されることなりましたに(213条1項5号、6号)。
改正前の過料のもとでは不出頭率が高く、これが財産開示手続の実効性の低さ、ひいては申立てを躊躇する原因となっていました。制裁が罰金となることにより、手続の実効性がより高くなると思われます。
4 要件
申立ての要件としては、債務名義があることのほか、本執行が不奏功であることが必要です。具体的には、①の証明又は②の疎明がなされることが必要となります。
①「強制執行又は担保権の実行における配当等の手続(申立ての日より6月以上前に終了したものを除く。)において、申立人が当該金銭債権の完全な弁済を得ることができなかつたとき」(197条1項1号)。
②「知れている財産に対する強制執行を実施しても、申立人が当該金銭債権の完全な弁済を得られないこと」(2号)。
実務では2号要件で申し立てることが多いと言われています。
5 手続の流れ
申立手数料は2000円です。
債務者は、裁判所に出頭する1か月ほど前、裁判所に財産目録を提出する必要があります(規則183条1項 )。
この財産目録は債権者には送達されませんので、債権者は期日前に閲覧・謄写することになります。
なお、財産目録には金融機関からの借入金、取引先の買掛金などの消極財産を記載されないことになっています。
財産開示期日では、債権者は債務者に対して探索的な質問をすることはできないとされています。
債権者が希望した場合は続行期日が設けられることもあります。
なお、財産開示手期日に出頭した債務者との間で訴外の和解が成立した事例もあるようです。