1 はじめに
遺産分割協議・遺産分割調停では土地の評価が争いになることがあります。すなわち、土地を単独で取得したい相続人の立場からは、評価額が低い方が支払う代償金の額が減ります。反対に、土地を取得しない相続人からすれば、土地の評価額が高い方がより多くの代償金を取得することができます。
このように土地を取得したい相続人とそうでない相続人とで土地の評価額をめぐって利害が対立するので、不動産の評価額を的確に算定することは重要となります。
2 土地の評価額は合意で決めるべき
土地の評価額は、①相続人全員の合意により決める方法、②鑑定により決める方法があります。鑑定の場合は高額な費用がかかるので、合意を目指すことが一般的です。
3 宅地の場合
一般に、固定資産評価額は公示価額(時価に近いとされている)の70%、相続税評価額は公示価格の80%とされています。
そこで、固定資産評価額を70%で割り戻したり、あるいは相続税評価額を80%で割り戻した金額を評価額とすることがあります。
もっとも、都市部や市街地に所在する宅地の場合、実際の価額のほうが固定資産評価額や相続税評価額よりもはるかに高い場合があります。
そこで、各相続人が不動産業者の査定書を出し合い、それらの平均値を評価額とする方法があります。
ところで、不動産業者の査定書は業者によって査定額が区々であるところ、不動産を取得したい相続人からすれば金額が低い査定書を提出するでしょうし、それ以外の相続人からすれば金額が高い査定書を提出することになるでしょう。
そこで、相続人全員の用意した査定書の平均値を評価額としたり、最高値・最低値が中央値とかけ離れている場合は最高値・最低値を除外した平均値を評価額とすることがあります。
4 宅地以外の場合
田、畑、山林等の場合、固定資産評価額や相続税評価額との乖離は大きくないので、それらの評価額=固定資産評価額や相続税評価額とすることが多いです。
また、地域によっては、宅地以外の不動産は固定資産評価額よりも低額ということもあります。誰も取得を希望しない場合は評価0とすることが多いと思われます。
5 抵当権付き不動産の評価
以上は無担保の不動産を前提としていました。
抵当権付き不動産の評価が問題となることがあります。すなわち、被担保債務が被相続人の債務の場合、不動産の時価から被担保債務を控除するかが問題となります。
この点について、遺産分割審判の場合、被担保債務は相続開始時に相続人に分割帰属することになり、遺産分割の対象となるのは積極財産だけなので、被担保債務の負担がないものとして評価するべきとされています。
これに対し、遺産分割調停の場合は、当該抵当権付き不動産を取得することになった相続人が被担保債務全額を引き受けるのであれば、当該被担保債務を不動産の時価から控除して評価する余地があるとされています。
6 最後に
無担保の不動産について、遺産分割審判の場合、当事者の合意がなければ、固定資産評価額や路線価等を参考とすることは難しいとされています。