1 はじめに
相続人が被相続人の療養看護を長年にわたってしてきた場合、法定相続分よりも多くの相続分を取得できることがあります。
これは寄与分の問題になります。
では、療養看護のケースではどのような場合に寄与分が認められるでしょうか。
以下の6つの要件をすべて満たす必要があります。
2 療養看護の必要性
要介護2以上が1つの目安になります。
被相続人が完全看護の病院に入院していたり、施設に入所していた場合、必要性が認められません。
3 特別の寄与
通常の扶養義務の範囲を超えていることです。
例えば、被相続人と同居し家事を分担していただけでは、特別の貢献は認められません。
配偶者の特別の寄与は認められないことが多いです。夫婦間では協力扶助義務がありますし(民法752条)、寄与分は法定相続分で考慮されていると評価することが可能だからです。
4 無償性
名目を問わず、例えばお小遣い、交通費として定期的に貰っていた場合は、無償性は認められない場合があります。
また、相続人が被相続人の住居で同居し、かつ被相続人の資産や収入で生活していた場合、無償性は認められない場合があります。
5 継続性
1年以上継続して看護したことが目安とされています。
介護サービス期間は除くことになります。
在宅介護が半年で、その後、病院で3か月、施設で3か月、再び在宅介護が半年の場合のように在宅介護期間が連続していない場合でも、通算して1年以上であれば、継続性ありとされます。
6 専従性
専業や専念ということまでは不要とされています。
もっとも、例えば、寄与分を主張する相続人が平日フルタイムで働き、その間は職業看護人に被相続人を看護してもらい、夕方以降、看護していたとします。この場合、専従して看護していたとはいえませんので、寄与分は認められません。
7 財産の維持又は増加との因果関係
相続人が療養看護をしたことにより職業看護人に支払うべき費用の出費が免れることが必要です。
8 評価方法
寄与分額=報酬相当額×介護日数×裁量割合とされています。
報酬相当額は、介護報酬基準を参考とします。
介護日数は、実際に介護した日数になります。
そのため、介護日数には、入院期間、入所期間、在宅又は通所の介護サービス利用期間は含まれません。
裁量割合ですが、相続人は職業看護人ではないこと、もともと扶養義務を負っていることからして、職業付添人が看護した場合にもらえる金額と全く同じ額をもらえるわけではありません。
実務的には50~80%で計算するケースが多いとされています。
9 最後に
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