1 相談事例
Aは長男Bとマンションで二人暮らしをしていました。このマンションはAが銀行で30年ローンを組んで購入したものでした。ローンを組んで10年後、Aは末期ガンになり余命宣告を受けました。Aには次男Cがいましたが、BとCは不仲でした。そこでAはBにマンションを相続させる旨の遺言(特定財産承継遺言)を作成しました。Aは遺言を作成して半年後に亡くなりました。
Bは銀行と交渉し、残りの住宅ローンはBが全額引き受ける旨の契約を交わしました(免責的債務引受)。CはAが作成した遺言の存在を知り、Bに対して遺留分侵害額請求を行うことにしました。Bとしては遺留分を支払う意思はあるものの、Cが相続した住宅ローンの負担を引き受けたので、遺留分の計算にあたりこの負担を考慮して欲しいと考えています。
2 民法1047条3項
改正相続法によれば、遺留分侵害額請求を受けた受遺者は、遺留分権利者承継債務について弁済その他の債務を消滅させる行為をしたときは、消滅した債務の額の限度において、遺留分権利者に対する意思表示によって負担する債務を消滅させることができます。
遺留分侵害額請求を受けたBは、Cが相続した住宅ローン債務について、銀行との間で免責的債務引受を行っています。これによりCの銀行に対する住宅ローン支払債務は消滅します。そこで、Bは、Cが免れた債務の限度で、Cに対して意思表示を行うことにより遺留分の支払いを免れることができます。