1 はじめに
遺産分割では、相続人の一人が被相続人から生前に特別受益を得ていた場合、それは遺産の前渡しと評価されることになります。
そこで、よくあるご相談についてご説明します。
2 相談内容
私の父が先日亡くなりました。
父の遺産は預貯金や不動産があります。
兄は、大学院在学中にお見合いし、今の奥さんと結婚しました。
父は、結納金や結婚式費用の大半を負担していました。
兄もこのことは認めています。
私は未婚であり、父から兄が受けたような援助を一切受けていません。
兄と同じ相続分とされるのは公平に反すると思います。
3 裁判例
結婚式の費用は親が自らのために支出した費用といえます。
平成31年1月11日名古屋家裁審判では「親が子の結婚式費用を負担することは、そもそも生計の資本の前渡しに該当するものではない」としました。
また、結納金は結婚相手の親に対する贈与といえます。
上記審判では「結納金の風習は、元来、夫となる者の親が妻となる者の親に対して支度金として交付する性質のものといわれており、本件の結納金の趣旨がこれと異なるものであるという特別の事情はうかがわれず、上記結納金が遺産の前渡しといえるだけの贈与とは認められない。」としました。