1 はじめに
従前,年少女子の逸失利益の基礎収入は,「女性労働者の」全年齢平均賃金とされていました。
もっとも,現在では,「全労働者の」全年齢平均賃金を基準にするとされています。
次の問題として,年少女子の生活費控除率を,女性の生活費控除率(30%)と同率で計算してよいかという問題があります。
そこで,年少女子の逸失利益は,基礎収入を全労働者の平均賃金としつつ,生活費控除率を女性の生活費控除率である30%と計算してもよいかが問題となります。
2 問題の所在~年少男子との比較
年少女子の生活費控除率を女性のそれと同率としてもよいかが問題となる背景には,年少男子とのバランスを考慮しなければならない点にあります。
すなわち,年少男子の基礎収入は,「男性労働者の」全年齢平均賃金で計算します。
また,男性の生活費控除率は50%とされています。
そうすると,仮に年少女子の基礎収入を全労働者の全年齢平均賃金とし,生活費控除率を,女性の生活費控除率である30%で計算すれば,年少女子の死亡逸失利益は,年少男子のそれよりも高くなってしまいます。
もともと,年少女子の基礎収入を全労働者の全年齢平均賃金としたのは,年少女子の逸失利益は年少男子のそれに比べて看過しがたい差があるので,それを是正することが目的でした。
しかし,上記の逆転現象は,当初の目的を超えるものです。
3 年少女子の生活費控除率は45%程度
そこで,年少女子の生活費控除率は,30%ではなく,45%程度で計算されることが多いとされています。
このような調整をすることにより,年少女子の死亡逸失利益は,男子のそれとほぼ同額になります。
4 まとめ
以上,年少女子の死亡逸失利益について,生活費控除率を女性と同率にしてよいかという問題に絞ってご説明しました。
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