1 はじめに
交通事故の裁判では認容額の1割程度が弁護士費用相当額として認められます。
以下では、弁護士費用特約を利用している場合、自賠責保険に被害者請求を先行せず訴訟提起した場合においても、原則どおり認容額の1割程度を損害として認められるかについて説明していきます。
2 弁護士費用特約との関係
まず、被害者が弁護士費用特約を利用して弁護士に訴訟追行を委任していた場合、被害者は基本的には弁護士費用を負担することはありません。そのため被害者には弁護士費用相当額の損害が生じていないのではないか問題となります。
実際、裁判では,加害者側の保険会社から,被害者に弁護士費用の損害は生じていないと主張してきます。
しかしながら、裁判例では上記のような反論は認められていません。そのため、最近では、損保側の代理人は、そのような反論をすることは見かけません。
なお、保険会社によっては、約款上、裁判で弁護士費用が認められた場合、その相当額を保険会社に返金するよう求めるところもありますので,注意が必要です。
3 被害者請求をせずに訴訟提起した場合
以下では、最近の裁判例をご紹介します。
専業主婦の死亡事案でしたが、被告側は、被害者請求をしていれば自賠責保険の死亡保険金3000万円の給付がなされていたはずであり、これにより賠償すべき弁護士費用の額やそれに対する遅延損害金の額が少なくなるはずであるから、自賠責保険金相当額に対応する弁護士費用の賠償請求を否定するべきであると主張しました。
これに対して裁判所は「自賠責保険を請求することは、権利であって義務ではないし、加害者側が弁護士費用や遅延損害金の発生を回避するには、支払義務の発生が見込まれる損害額の全部又は一部を弁済し又は弁済供託する方法があることを踏まえると、被害者又はその相続人が自賠責保険の被害者請求をしなかったことが弁護士費用の損害の発生を妨げる事情になるとは解されない」としました(京都地裁令和4年6月16日、自保ジャーナル2132号)。
4 最後に
以上,交通事故における弁護士費用について説明しました。
交通事故でお困りの方はイーグル法律事務所までご相談ください。