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弁護士コラム:【交通事故】最近の裁判例の紹介

2023.06.05
1 名古屋地裁令和3年12月21日(自保2134号)の事案

消滅時効の抗弁に対し、債務承認の再抗弁が認められるか問題となった最近の裁判例をご紹介します。

事故は、平成24年12月21日に発生し、事故態様は、被告車両が路外駐車場から本件事故現場の道路に右折進入しようとした際、本件道路上の原告車両と衝突した、というものでした。
平成26年10月6日、原告は、症状固定となりました(認定事実)。

平成27年、本件事故時に原告車両に同乗し本件事故により損害を被った別件原告は、被告に対し、損害賠償訴訟(別件訴訟)を提起していました。
別件訴訟の担当裁判官は、平成28年5月31日、別件原告代理人及び被告代理人に対し、書面で和解勧告をしました。同書面には、「今後の紛争解決に資することを考えると、Xさん(原告)にも利害関係人として和解に関与していただき、過失割合についての争いをなくしておくのが相当と考えました」との記載がありました。

この和解勧告を受けて、平成28年7月7日、別件訴訟に利害関係人として原告も加わり、裁判上の和解が成立し、その和解条項の中には、本件事故の過失割合についての確認条項(被告8割、原告2割とするもの。)も設けられました

原告は、令和元年5月21日、被告に対する本件訴訟を提起しました。
被告は、同年11月6日、第1回口頭弁論期日において、原告に対し、原告の被告に対する損害賠償請求権について消滅時効を援用するとの意思表示をしました。

 

2 裁判所の判断

原告側は、消滅時効の抗弁に対し、「別件和解における原告と被告との間で本件事故について過失割合を確認する条項を設けているところ、これは原告の被告に対する本件交通事故に基づく損害賠償義務があることを前提としており、被告は黙示に原告の被告に対する損害賠償請求権の存在を認識していることを表示しているのであり、債務の承認に当たる」と債務承認の再抗弁を主張しました。

これに対し裁判所は、「ある時点において、不法行為に基づく損害賠償債務が存在しているかどうかは、当該不法行為により発生した損害全額、過失割合のほか、既払金の存否や金額等によって定まる。この点、本件では、原告の損害額について、受傷の有無、症状固定時期、入院の必要性等が争点であるほか、後遺障害該当性も争点である上、被告は、別件和解時点までに318万3065円を原告に対して弁済している。そうすると、過失相殺にかかわらず、既払金により債務は残存していないことはあり得るのであって、原告と被告とが本件事故についての過失割合を確認したことは、被告が原告に対して、別件和解時点において原告の被告に対する権利が存在することを知っている旨を表示したことには当たらないというべきである。」と判示しました。
なお、名古屋高裁も一審と同じ結論となりました。

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