相続人が遺言書を「破棄又は隠匿」した場合、当該相続人は相続人の地位がはく奪されることになります。ここで、「破棄又は隠匿」の意義が問題となります。
最決平成 9年1月28日によれば、「相続人が相続に関する被相続人の遺言書を破棄又は隠匿した場合において、相続人の右行為が相続に関して不当な利益を目的とするものでなかったときは、右相続人は、民法 891条5号所定の相続欠格者には当たらないものと解するのが相当である。」としています。
ところで、この事案の場合は、自筆証書遺言でしたが、公正証書遺言、法務局における保管制度を利用した自筆証書遺言の場合も「隠匿」がありえるのかが問題となります。というのも、公正証書遺言の場合、他の相続人は遺言書を検索し、謄本を取得することができますし、法務局における保管制度を利用した自筆証書遺言の場合も他の相続人は同じことができるからです。
この点について、公正証書遺言の場合は、最判平成 6年12月16日により、「隠匿」がありえることになります。他方、法務局における保管制度を利用した自筆証書遺言の場合、今のところ裁判例がないので、今後の判断待ちということになります。