1 はじめに
令和2年4月1日、特別養子縁組に関する法改正がなされました。
1つ目は養子となる者の上限年齢の引き上げ、2つ目は特別養子縁組の成立の手続の見直しになります。
1つ目は民法の改正、2つ目は家事事件手続法・児童福祉法の改正になります。
2 養子となる者の上限年齢の引き上げ
改正前は、養子の年齢は、原則として申立時において6歳未満、例外として6歳に達する前から引き続き養親となる者に監護されている場合には8歳未満とされていました。
しかし、改正法では、次のとおりとなりました。
原則、15歳に未満に引き上げました。
また、例外事由がある場合は審判確定時に18歳未満であれば特別養子になることができます。ただし、養子になる子が15歳に達している場合はその同意が必要とされました(民法817条の5第1項~3項)。
3 特別養子縁組の成立の手続の見直し
特別養子縁組について、特別養子適格の確認の審判と、特別養子縁組成立の審判の2段階の審判で成立させることになりました。
第1段階の特別養子適格の確認の審判事件について、家事事件手続法では、「家庭裁判所は,養親となるべき者の申立てにより,その者と養子となるべき者との間における縁組について,特別養子適格の確認の審判をすることができる。」と定められています(164条の2)。
ところで、特別養子縁組の成立要件としては、第1に、父母の同意があること(同意がない場合は同意不要事由)が必要です。
すなわち、「特別養子縁組の成立には、養子となる者の父母の同意がなければならない。ただし、父母がその意思を表示することができない場合又は父母による虐待、悪意の遺棄その他養子となる者の利益を著しく害する事由がある場合は、この限りでない。」と定められています(民法817条の6)。
また、第2の成立要件として、特別の事情が必要です。
すなわち、「特別養子縁組は、父母による養子となる者の監護が著しく困難又は不適当であることその他特別の事情がある場合において、子の利益のため特に必要があると認めるときに、これを成立させるものとする。」と定められています(民法817条の7)。
したがって、特別養子適格の確認の審判では、父母の同意の有無、特別の事情について審理されることになります。
4 児童相談所所長の関与
今回の改正では、児童相談所所長が特別養子適格の確認の審判に関与することも認められました。
すなわち、児童相談所長は、児童に係る特別養子適格の確認の審判事件の手続に参加することができ、利害関係参加人とみなされます(児童福祉法33条の6の3第1項)。
そのため、児童相談所長は、特別養子適格の確認の審判において、父母の同意の有無(不同意事由含む)、特別の事情についての関係証拠を提出することができます。そして、裁判所はその関係証拠に依拠して要件該当性を判断することになります(名古屋家裁令和3年2月26日・法と家庭の裁判39号68頁)。