婚約した後、二人で暮らすために不動産を購入したが婚約破棄となった場合、婚約を破棄した者は慰謝料とは別に不動産購入費用まで賠償責任を負うことになるのかが問題となります。
この点について、神戸地方裁判所平成14年10月22日判決が参考になります。この事案では、原告は不動産を代金1650万円で購入するなどの支出をしていました。しかし、裁判所は次のとおり損害にはならないとしました。
「しかしながら、原告は、これらの支出により、その対価に相当するというべき本件不動産を取得しているのであって、原告は、本件不動産の購入後現在までその所有者であり、その登記名義を有していること、原告は本件不動産の購入後いつでもこれを利用できる状況で支配していること、本件婚約の破棄により本件不動産の財産的効用・価値の全部ないし一部が喪失するという関係にはないことにも鑑みると、原告に本件不動産の購入価格相当額ないしその手数料相当額の財産的損害が発生したと即断することはできない。そして、本件不動産について、本件婚約の解消により原告の当初の購入目的に従った用途が失われ、あるいはその購入後に時価の下落があったとしても、いまだ現実に具体的な損害が生じていない、あるいは具体的な損害額が不明であるといわざるを得ない。」