自己破産申立前に自宅不動産を親族に贈与した場合、破産手続が開始された後、破産管財人は、親族に対しては、無償行為否認に基づき、自宅の返還を求めることになります(破産法160条3項)。また、この行為は免責不許可事由にも該当します。親族に対する贈与は「債権者を害する目的で、破産財団に属し、又は属すべき財産の隠匿、損壊、債権者に不利益な処分その他の破産財団の価値を不当に減少させる行為をしたこと。」に該当するからです(破産法252条1項1号)。このように、自己破産申立て直前の贈与は、否認されること、免責不許可事由に該当することから、控えるべきとされています。
では、贈与ではなく親族に売却して、破産者が親族から使用貸借又は賃貸借により自宅を使用し続ける場合は、どうでしょうか。この点、売却価格が適正価格でなければ、詐害行為否認(破産法160条1項)の問題が生じます。そこで、破産者としては、破産管財人に対して、適正価格での売却と疑われないように、固定資産評価証明書、不動産業者の査定書に基づき売却価格を決する必要があるとされています。