財産分与審判において裁判所で調査嘱託が採用されても、銀行などの嘱託先が相手方(口座名義人)の同意書を求めてくることがあります。そのため、相手方が同意書の提出を拒んだ場合、申立人は相手方の口座の取引履歴の開示を受けることはできません。
大阪家庭裁判所令和2年9月14日審判では、相手方が預貯金など金融資産について一切開示しなかったため、裁判所が各所に調査嘱託を行いました。ところがそのうち2社は相手方の同意がなければ開示できないと表明し、相手方が同意しなかったため、別居時点の取引残高が明らかにならなかった事案でした。
裁判所は、申立人が主張している相手方の口座残高の推計額に合理性があるなどの理由により、推計額を別居時点の残高としました。
これに対して抗告審(大阪高等裁判所令和3年1月13日決定)では、相手方は、実際の残高は推計額よりも少ないとして別居時点の残高がわかる通帳の一部を提出しました。しかし、抗告審は、相手方の手続進行は信義則に反するとしました(家事事件手続法2条)。