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弁護士コラム:【遺産相続】夫婦に子がいない場合の遺言作成

2022.03.08
1 前提

婚姻している夫婦に子がいない場合の遺産分割についてです。
例えば,夫が先に亡くなったとします。
夫の両親や祖父母が既に亡くなっていた場合,妻と夫の兄弟姉妹(場合によっては甥姪)はそれぞれ4分の3,4分の1の割合で相続することになります。
しかし,妻は夫の兄弟姉妹と没交渉だった場合,兄弟姉妹と遺産分割協議をすることは難しいかもしれません。

 

2 遺言を作成したほうがよい

このような事態を避けるためには,夫婦が相互に「全ての遺産を相続させる」旨の遺言(特定財産承継遺言)を作成しておくことが肝要です。
こうしておけば,先の例では,妻は,遺言に基づき,つまり兄弟姉妹と協議することなく,不動産の相続登記,預貯金など金融資産の解約をすることができます。
また,兄弟姉妹は遺留分権利者ではありませんので,妻は,夫の死後,兄弟姉妹から遺留分侵害額請求をされることもありません。
ところで,さきほど夫婦が相互に遺言を作成するのが望ましいと説明しましたが,2人が同じ遺言書に遺言を書くことは禁止されています。なぜなら,民法975条では「遺言は、二人以上の者が同一の証書ですることができない」と定められているからです。必ず別々の遺言書にしておくことです。

 

3 残された配偶者について

先の例において,夫に先立たれた妻の遺言書はどうなるでしょうか。
妻の遺言書は「夫に全ての財産を相続させる」という内容であったところ,夫は亡くなっているので,遺言は効力を有しないことになります。
そうすると,何も手立てをしないとなれば,妻の遺産については,遺言がないことを前提に,妻の相続人間で遺産分割協議を行うことになります。

このような事態を避けるため,夫婦としては,生前に遺言書作成する場合,相手方が先に亡くなった場合に誰に遺産を遺贈するのかを決めて,遺言書に記載しておくことが望ましいと思われます。
もちろん,先の例では,妻は,夫が亡くなってから,新たに遺言書を作成し直すことも考えられます。
しかし,夫が亡くなった時点で,妻が認知症などにより遺言能力がない場合,遺言書を再作成することはできません。
そのため,夫婦としては,相手方が亡くなった場合に遺産を遺贈する先が決まっているのであれば,あらかじめ予備的遺言を書いておいたほうが無難といえます。もちろん,いったん書いた遺言は撤回することが可能なので,第2候補が変わった場合は当該遺言を撤回して新たに遺言を作成することも可能です。

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