1 はじめに
清算価値の基準時は再生計画の認可決定時になります。そのため、再生債務者は、再生計画案提出時、改めて預貯金や退職金の額を計算して清算価値を算出しなければなりません。もっとも、実務では、そこまでの厳密な運用はなされていない場合もあります。以下、財産ごとに説明していきます。
2 預貯金、退職金
申立時の預貯金、退職金の額が再生計画案提出時までに増加しているケースがあります。もっとも、実務では、改めて提出時の金額を算出し直すことはありません。そのため、預貯金、退職金の清算価値は、申立時を基準とします。
3 ローン付き住宅
申立時の残ローンが2000万円、評価額が2000万円だったとします。再生債務者が開始決定後に弁済許可を得て月10万円ずつ弁済し、再生計画案提出時までに40万円弁済したとします。そうすると、再生計画提出時の残ローンは1960万円になります。そのため、評価額が(申立時と変わらず)2000万円の場合、2000万円-1960万円=40万円を清算価値に上乗せする実務運用になっています。
これに対しては、評価額も厳密には下がっていること、預貯金や退職金の場合は再生計画案提出時に清算価値を再計算しない運用となっていることとの均衡を考えたとき、上記のように40万円を清算価値に計上することについて疑問を呈する見解もあります。