1 はじめに
会社内で盗撮があった場合、被害者である従業員は会社に対して損害賠償請求をすることが考えられます。この請求が認められるかについて一般的なことを説明します。
2 使用者責任
盗撮行為が「事業の執行につき」(民法715条1項)行われたとして、従業員は会社に対して使用者責任による損害賠償請求をすることが考えられます。
「事業の執行につき」とは、使用者の事業ないし被用者の職務の範囲内に属する行為、ないしは、その外形を備えている行為をいいます。しかし、盗撮行為は欲望を満たすものなので、使用者の事業に属するものではないとされる可能性が高いと思われます。
3 安全配慮義務違反
会社は、雇用契約上、従業員に対し、労務の提供に関して良好な職場環境の維持確保をすべき義務を負っています。そこで、従業員は、会社は職場において盗撮が発生しないように適切な措置をとるべきであるのにそれを漫然と怠ったとして、会社に対して債務不履行による損害賠償請求をすることが考えられます。
しかし、盗撮行為は軽犯罪法などの犯罪行為であり、第三者に発覚しないよう秘密裏に行われるものです。そのため、会社が盗撮行為を予見して、それを回避するための措置を行うことは困難とも考えられます。したがって、損害賠償請求の認容のハードルは高いと思われます。
4 最後に
盗撮と刑事事件については、別記事弁護士コラム:【刑事事件】盗撮をしてしまった場合のよくあるご相談をご確認下さい。