1 はじめに
葬儀費用は被相続人の死亡後に発生したものなので遺産分割の対象にはなりません。また葬儀会社との関係では喪主が支払義務を負うことになります。
では相続人内部ではどのように負担することになるでしょうか。
この点は判例がなく、諸説あります。
2 喪主負担説
喪主が葬儀費用を負担するべきとする説です。
東京家裁ではこの説により運用されているようです。
遺産分割調停で解決しなかった場合、喪主は他の相続人に対し民事訴訟を提起することになります。
3 相続人負担説
相続人が相続分に応じて負担するべきとする説になります。なお、喪主が香典をもらい、香典返しをしていた場合は、香典から香典費用を差し引いた金額を葬儀費用に充てることになります。
この考え方によれば、喪主が他の相続人を意図的に呼ばなかった場合でも、他の相続人が相続分に応じて葬儀費用を負担することになります。そのため、このような場合には他の相続人の理解を得ることは難しいと思われます。
4 相続財産負担説
相続財産から葬儀費用を負担する説になります。
この説によれば、相続財産が500万円、葬儀費用が200万円、相続人が配偶者と子2人の場合、配偶者の取り分は150万円、子の取り分はそれぞれ75万円となります。
5 まとめ
相続人の一人が多額の生前贈与を受けていた場合はその者が葬儀費用を負担するべきという価値判断があり得ます。また、喪主があまりにも高い葬儀を執り行った場合にまで他の相続人が葬儀費用全額について相続分に応じて負担するのは不合理であるという考え方もあるでしょう。このようなことを考慮すれば、個別具体的な事案に応じて柔軟に考えるべきといえます。