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弁護士コラム:【遺産相続】遺産分割の方法

2021.05.09
1 遺産分割の方法

調停では、当事者全員が合意すれば、実情に応じた分割方法を決めることができます。

他方、審判では、現物分割→代償分割→換価分割→共有とする分割の順番に検討することになります(大阪高決平成14年6月5日)。分割方法について当事者の意見が一致している場合は、それに従うこともあります。

 

2 現物分割

一筆の土地を分筆し、各相続人が各土地を取得する場合も含みます。分筆は土地の測量が必要であり当事者の協力が必要ですし、どのように分筆するか当事者の話合いが必要なので、分筆を前提とする現物分割は調停でしかできません(つまり審判ではできません)。

 

3 代償分割

実務では、代償分割が多いです。現物分割は相続人全員の同意が必要な上、時間と費用(測量費用)がかかるからです。

ところで、審判の場合、代償金の支払いは即時が原則です。分割払い、猶予は基本認められません。
代償金が高額になる場合は預貯金の残高証明書や預貯金通帳の写しを求められます。
また、融資を受けて支払う場合は銀行支店長名義の融資証明書を、不動産売却により支払う場合は買主の買付証明書を提出することが求められます。

他方、調停の場合であれば、代償金を即時に支払うことが可能であることの証拠資料は必ずしも必要ありません。
当事者の合意が条件となりますが、銀行融資を受けて相当期間後に代償金を支払うことや、代償金の分割払いも可能です。
また、代償金の支払いに代えて、相続人固有の財産の所有権を移転させる方法もあります(審判ではできません)。

さらに、相続人が代償金を支払って遺産を取得した場合、譲渡所得税が発生する場合があります。譲渡所得税の計算にあたり「取得費」として代償金を計上できるか問題となります。
この点について、最決平成6年9月13日では、「上告人が代償として他の相続人に交付した金銭及びその交付のため銀行から借り入れた借入金の利息相当額を右相続財産の取得費に算入することはできない。」としました。そのため、代償金を支払う相続人は、譲渡所得税の負担を考慮して代償金の額を決める必要があります。

 

4 換価分割

代償分割ができない場合の分割方法です。
審判では競売のみ、調停では競売+任意売却となります。
以下、審判、調停の順に説明していきます。

まず、審判では、競売による換価分割となります。
審判で競売が命じられた場合、当事者の一人が、審判正本を執行裁判所に提出し(民事執行法81条1項)、手続費用を予納して、手続が開始されることになります。
当該不動産が被相続人名義の場合は、当事者全員に共有持分移転登記をした上で申し立てることになります。
なお、価値の低い不動産の場合、競売手続を経ても競落されないこともあり、そうなれば結果として共有分割と同じ(遺産共有状態が続く)になります。

次に、調停の場合における換価分割は、競売だけでなく、任意売却も可能です。
任意売却の場合は、共同相続人全員の協力が必要となります。そのため、期日に出頭しない相続人がいる場合や、任意売却に非協力的な相続人がいる場合は、任意売却を前提とした調停を成立させることは困難とされています。

任意売却の方法としては、①調停成立前に換価して売却代金を分割する方法、②調停成立時に各相続人が具体的相続分率に応じて取得し、任意売却後、その代金を具体的相続分率で分配する合意をして調停成立という方法があります。

実際の売却手続は、①相続人の代表者が行う方法、②相続人全員が行う方法があります。①が一般的です。

 

5 共有による分割

遺産共有の状態で調停又は審判を終了させ、共有の解消は共有物分割訴訟で別途解決する方法です。
これは、「ただ紛争を先送りするだけで、何ら遺産に関する紛争の解決とならないことが予想される」(大阪高決平成 14年6月5日)ので、代償分割や換価分割ができない場合はやむを得ず選択されることになります。

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