1 はじめに
この制度は、被相続人の合理的意思を推測探求し、遺言、遺贈、死因贈与を補完し、もって被相続人が有したであろう生前意思の実現を図る制度になります。
2 判断基準
親族が特別縁故者に該当するか判断する場合、抽象的には「親族としての通常の交際の範囲を超える」か否かが問題となります。
例えば、東京高裁平成27年2月27日決定(判例タイムズ1431号126頁以下)は,特別縁故者の該当性について,民法958条の3第1項は例示列挙であることを前提とし,「・・・同項にいう特別縁故者と認められるためには,上記の例示にそのまま当てはまるものではないとしても,例えば被相続人と生計を同じくしていた者と同視できるほどに被相続人と密接な生活関係があったとか,その程度はともかく,日常的に被相続人の自宅を訪れて何くれとなく被相続人の日々の生活等を援助していたとか,被相続人の介護を担っていたなど,被相続人との間で実際に密接な生活上の一体関係や援助関係等が認められることが前提となっているものと解するのが相当である。」としています。
3 死後の縁故について
例えば、被相続人の葬儀、祭祀法事、遺産管理等に関わったことだけから、特別縁故者に該当することにはなりません。つまり、特別縁故者の判断においては、生前の縁故がまず必要であり、いわば補完的な意味合いで死後の縁故が考慮されることになります。
生前の縁故を裏付ける資料として、例えば、被相続人との手紙のやりとり、被相続人と一緒に写っている写真を提出する必要があります。
4 手続の流れ
まずは申立ての提出期限を把握する必要があります。家庭裁判所に確認することになります。
また弁護士が代理をする場合は手続代理委任状が必要となります。弁護士が複数の代理をする場合は、各自から双方代理申述書を取得する必要があります。
申立書は特に形式に決まりはありませんが、生前の縁故を示す資料をいかに多く提出できるかがポイントとなります。
申立書を提出した後、裁判所は事実の調査を行うことになります。相続財産管理人に対して意見書を提出するよう求めたり、家庭裁判所調査官が聴取したりします。そして裁判所は、申立書、意見書、反論書面を踏まえて、特別縁故者該当性を判断することになります。
以上につき詳しくは、弁護士コラム:【家事事件】特別縁故者の審判についてをご確認ください。
5 過去に扱った案件のご紹介
被相続人は、生前、施設に入所していました。被相続人は申立人と電話で話をしたり、面会することを楽しみにしていました。また、申立人は、施設の行事に参加したり、被相続人の緊急連絡先となり、被相続人が体調を崩した時は施設から連絡がいくようになっていました。
弁護士は、施設に連絡し、当時、被相続人を担当されていた職員の方と面談し、その職員の方の陳述書を作成しました。
最終的には、この陳述書の効果もあり、申立人は特別縁故者と認められ、すべての遺産を取得することになりました。被相続人と申立人の生前の関わりからして、被相続人は申立人に対して遺言を書いていたと推認されると判断されたのではないかと思われます。