1 メリットがない場合
配偶者居住権は原則として配偶者が亡くなるまで存続します。そして配偶者居住権の評価額は存続期間が長ければ長いほど高くなります。例えば80歳の配偶者であれば平均余命を考えた場合、存続期間は10年前後になります。そうすると自宅の所有権を相続するよりも安価で終身居住することができるので、代償金を支払う必要がなくなったり、預貯金も幾らかは相続することができます。対して50歳の配偶者であれば終身となると、存続期間は30年前後になるでしょう。そうすると配偶者居住権は所有権と同じくらいの価値になりますので、そうであれば所有権を相続してしまった方がよいでしょう。この場合は配偶者居住権を設定するメリットはありません。
2 特定財産承継遺言の場合
配偶者居住権は遺贈又は死因贈与でしか設定することができません。特定財産承継遺言では設定できないのです。では配偶者居住権を特定財産承継遺言で行ってしまった場合、配偶者居住権は発生することはないのでしょうか。この点、相続させる旨の遺言について特段の事情がある場合、遺贈と解釈することができるとした最高裁判例があります。この判例を前提に特段の事情を認めることができれば、特定財産承継遺言の場合でも配偶者居住権が認められる余地があります。