1 はじめに
ローンで購入した自動車は、車検証上、所有者がローン会社、使用者が購入者となっています。
そこで、ローンで購入した車を乗車中に事故に遭った場合、使用者は加害者に対し損害賠償請求できるかが問題となります。
問題となるのは、交通事故により侵害されたのは当該自動車の所有権であるところ、損害賠償請求できるのは所有権者であるローン会社であり、使用者は加害者に対してなんら請求できる立場にないとも考えられるからです。
2 分損の場合
車の時価>修理費用の場合を分損といいます。
使用者が車の修理費用を自ら支出すれば、加害者に対しその修理費用を請求することができます。
また、使用者が修理費用と併せて評価損を請求する場合、留保所有権者が評価損の損害賠償請求権が使用者にあることを認めていることから、使用者が評価損の損害賠償請求をできるとした裁判例もあります(名古屋地裁令和3年12月24日、自保ジャーナル2118)
3 全損の場合
全損には物理的全損と経済的全損があります。
物理的全損は文字どおりです。
経済的全損とは、車の時価<修理費用の場合になります。
その上で、物理的全損の場合、使用者は加害者に対し車の事故当時の時価相当額を請求することが出来ないとされてます。
なぜなら、物理的全損の場合、車の交換価値が完全に失われているので、交換価値を把握している所有権者のみが請求権者を有すると考えられるからです。
次に,経済的全損の場合、使用者は、実際に修理し、あるいは修理費相当額を支払う予定であることを主張立証すれば、車の時価相当額を請求できるとする見解があります。
この見解は、経済的全損の場合でも、物理的に修理可能であり、実際に修理してそのまま使用するケースもあることを重視しています。
4 最後に
以上、ローン車の物損事故において、使用者が加害者に対し損害賠償請求できるかについて説明しました。
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