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弁護コラム:【交通事故】最新裁判例紹介(京都地裁令和4年3月23日)

2023.02.05
1 はじめに

京都地裁令和4年3月23日判決(自保ジャーナル2126号)を紹介します。
後遺障害12級の場合の労働能力喪失率は14%となりますが、実際の減収などの事情を考慮し、一定期間は18%とした事例です。

 

2 事故前

被害者は事故により右母趾(親指)痛、右母趾MP、IP関節可動域の制限が残り、「1足のだ第1の用を廃したもの」として、後遺障害12級12号が残存しました。

被害者は、本件事故当時、サラリーマンとして、第二種電気工事士、アナログ第三種工事担当者等の資格を有し、電柱等に登り、電線の張替えや機器の改修工事などの仕事に従事しており、胴綱と命綱を装着して電柱で作業をしていました。作業中や昇降の際は電柱の足掛けに足を掛けて身体を支えたりバランスを取る必要がありました。
事故前年の平成28年度の給与所得は、980万8436円でした。
被害者は症状固定時53歳、定年は60歳でした。

 

3 事故後

被害者は、右母趾に力を入れにくい、曲げにくくなり、踏ん張りが効かなくなりました。そのため、勤務先から高所作業は困難と判断され、実際に行わなくなり、それにより深夜勤務や休日勤務がなくなり、手当や付加給が減少しました。そして、令和元年以降は現場作業をしなくなり、主に事務作業に従事することになり、業績給が減少、さらに減収することになりました。
被害者の給与所得は、平成29年が922万2798円、平成30年が833万2818円、令和元年が618万9720円となっていました。事故前年との比較で言えば、令和30年は約15%減、令和元年は約37%減となっていました。

 

4 裁判所の判断

まず、労働能力喪失期間は症状固定時の53歳から平均余命30年の半分である15年間(68歳まで)としました。

次に、基礎収入は、60歳までは、事故前年の給与所得額を基準にしました。そして、その間の労働能力喪失率は18%としました。理由は、高所作業ができなくなり、その結果、症状固定時の平成30年度でも15%程度減収していることを挙げています。

また、被害者の本件事故当時の就労状況に特に問題がなかったことから再雇用等により就労を継続する可能性が高いので、定年後の就労を継続する可能性は高いとしました。その上で、定年退職後の賃金体系が不明であること、被害者は本件事故当時において年齢別男性平均賃金を上回る収入を得ていたことから、定年退職後の基礎収入は年齢別男性賃金とするべきとしました。
具体的には、64歳までの4年は平成30年男性平均賃金60ないし64歳の455万0800円、68歳までの4年間は同平均賃金65ないし69歳の364万6000円としました。その間の労働能力喪失率は通常どおり14%としました。

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