1 民法470条3項について
併存的債務引受は、債務者と引受人となる者との契約によってもすることができます。この場合において、併存的債務引受は、債権者が引受人となる者に対して承諾をした時に、その効力を生ずる、とされています(民法470条3項)。
このように、併存的債務引受は、債務者と引受人との二者間の契約で成立しますが、債権者が引受人に対し承諾した時点で効力が発生することになります。
これは、併存的債務引受が第三者のためにする契約と構造が似ていることから説明をすることができます。
すなわち、契約により当事者の一方が第三者に対してある給付をすることを約したときは、その第三者は、債務者に対して直接にその給付を請求する権利を有する、とされています(民法537条1項)。そして、第三者の権利は、その第三者が債務者に対して同項の契約の利益を享受する意思を表示した時に発生する、とされています(3項)。
つまり、第三者のためにする契約は二者間で成立するが、第三者(受益者)の意思表示により効力が生じることになります。この構造と併存的債務引受は同じになります。
2 民法470条2項について
併存的債務引受は、債権者と引受人となる者との契約によってすることができる、とされています(民法470条2項)。併存的債務引受は保証と構造が似ているところ、保証の場合は主たる債務者の意思に反する保証が認められている(民法462条2項)ことと揃えることが望ましいとされたからです。
3 472条2項について
免責的債務引受についても、併存的債務引受と同様、債権者と引受人となる者との契約によってすることができる、とされています(民法472条2項前段)。
従来、判例では、免責的債務引受は第三者弁済と同じであり、第三者弁済について「弁済をするについて正当な利益を有する者でない第三者は、債務者の意思に反して弁済をすることができない。」(474条2項)こととの均衡から、少なくとも債務者の意思に反しないことを要する、としていました。
しかしながら、併存的債務引受の場合、2で述べたとおり、債務者の意思に反して行うことができます。そうすると、いったん併存的債務引受をして、債権者が債務者に対し債務免除を行えば、結果的に債務者の意思にかかわらず免責的債務引受と同じ効果を得ることになります。
そこで、改正法では、債務者の意思にかかわりなく、免責的債務引受が可能となりました。
もっとも、この場合、免責的債務引受は、債権者が債務者に対してその契約をした旨を通知した時に、その効力を生ずる、とされました(474条2項後段)。債務者が免責的債務引受を知らずに弁済してしまうなどの不利益を回避するためです。