1 婚約成立と認められるためには
婚約破棄による慰謝料請求が問題となる場合、婚約成立の有無が争われることがあります。
婚姻予約が成立したといえるためには,将来確実に婚姻することを約束したと認めるに足りる事実が必要です。
例えば、被告は,平成27年4月頃,原告に対し,「お前はもう【一人】じゃないんだから」,「一人じゃないんだぞ」「お前だけの体ではないから」や「生まれ変わった,俺と初婚する?」「東大行って俺とは結婚しないんだ」などといった電子メールを送信していたとします。
しかし、裁判例では、「原告が婚約の存在を裏付けるとして提出する電子メールの文言は,いずれも婚姻の予約の存在を明確に裏付けるものではなく,原告と被告との間で,明確に具体的な婚姻を成立させる旨の合意があったことをうかがわせる言動があったと認めるに足りない。」と婚約成立を否定しました(東京地方裁判所 平成30年(ワ)第11090号 損害賠償請求事件 令和元年6月28日)。
2 ペアリングを作っていた場合
また、裁判では、それを基礎づける様々な事実が主張されることになります。そこで以下では婚約成立が争われた裁判例を紹介します。
原告が「双方の名前入りのペアリングの指輪の購入の事実から婚姻成立があった」と主張するケースがあります。
具体的には、裁判例では、「原告は,平成26年10月2日,被告の誕生日祝いを兼ね,原告と被告の名前(Y&X)が刻まれている指輪2個を1個約12万円で購入し,同月9日には被告の指輪のサイズ直しを依頼し,同月23日にはサイズ直しされた指輪を被告に渡した。」という事実関係が認められましたが、最終的には、婚約の成立が否定されました。
すなわち、「原告及び被告の名前が刻まれているペアの指輪を購入することは,婚約を前提としていない交際中の恋人同士間でも行われることであり,指輪購入の事実をもって原告と被告との間に婚約があったと認めることもできない。」としました(東京地方裁判所 平成30年(ワ)第11090号 損害賠償請求事件 令和元年6月28日)。
3 結納していない場合
また、被告が「結納をしていないので婚約は成立していない。」と主張するケースがあります。このような主張について「結納品等のやり取りはされていないことについては,必ずしも結納品等の授受が必須とはいえない昨近の社会情勢に照らせば,これを重視することはできない。」とした裁判例があります(東京地方裁判所 平成26年(ワ)第32600号 慰謝料請求事件 平成28年11月14日)。
なお、婚約破棄と第三者に対する慰謝料請求については、弁護士コラム:【一般民事】婚約破棄と第三者に対する慰謝料請求をご確認ください。