1 はじめに
いわゆる赤本は、通院慰謝料について、週2、3回程度通院することを前提としています。そのため、通院頻度が少ない場合は実通院日数を基準とすることがあります。
もっとも、骨折の癒合を待つ場合は一般的に通院回数は少ないので、実通院日数を基準に慰謝料額を算定することは不適切といえます。
以下では、この論点が問題となった裁判例をご紹介します。
2 神戸地判令和3年9月19日(自保ジャーナル2110号)
被害者は、事故により、右腓骨骨折、右角膜損傷などの傷害を負い、約1年1ヶ月間、通院しました。
計4つの病院の実通院日数は計37日でした。
原告は、通院期間をベースに通院慰謝料額を計算しました。これに対し、被告は、通院期間に対して実通院日数が少なく、通院も不定期だから、傷害慰謝料は実通院日数を基準とするべきと主張しました。
裁判所は、「眼については、医師の指示に基づき経過観察が行われ、また、その受傷内容が骨折及び眼の傷害にかかわるものであり、自宅で安静状態を保ったり、あるいは、経過を見るなど、必ずしも頻繁に通院しなければならないものはいえない」とし、通院期間を基準に傷害慰謝料を算定しました。