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弁護士コラム:【離婚問題】婚姻費用分担請求の相手方が無職の場合

2022.05.03
1 はじめに

婚姻費用や養育費の義務者が支払いを免れるため、敢えて離職したり、収入資料を提出しないことがあります。このような場合、実収入が0円となり、義務者は婚姻費用や養育費の支払いを免れることができてしまいます。そこで、公平の観点から、従前の収入歴や賃金センサスを参考に、潜在的稼働能力に基づく収入額で婚姻費用や養育費の額を算定することがあります。

以下では、潜在的稼働能力に基づく収入額で計算するべきか否か争われた裁判例についてでみていきます。

 

2 東京高裁令和3年4月21日決定

一般論として次のとおりです。すなわち、婚姻費用を分担すべき義務者の収入は、現に得ている実収入によるのが原則であるところ、失職した義務者の収入について、潜在的稼働能力に基づき収入の認定をすることが許されるのは、就労が制限される客観的・合理的事情がないのに主観的な事情によって本来の稼働能力を発揮しておらず、そのことが婚姻費用の分担における権利者との関係で公平に反すると評価される特段の事情がある場合でなければならないものと解されるとしました。

本件のあてはめでは、①義務者の主治医の意見書では就労は現状では困難であるとされていること、②義務者は自主退職後、就職活動をして雇用保険の給付を受けたことはないこと、③現在就労していないこと、④精神障害者保健福祉手帳の交付申請をしていることを考慮して、特段の事情は認められないとしました。

 

3 東京高裁令和4年2月4日決定

一般論は触れられていませんが、2と同様と思われます。

本件のあてはめでは、義務者は月1回程度で精神科に通院していること、障害基礎年金を受給しており、障害等級は2級16号であること、主治医に相談せず就労したものの1か月で断念したこと、主治医から静養したほうがよいと言われたこと、今後の就労の見通しが立っていないことを考慮し、現時点で潜在的稼働能力は認められない、としました。

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