1 はじめに
進路変更によるバイクと車の事故の場合、東京地裁民事交通訴訟研究会(編集)『別冊判例タイムズ38』判例タイムズ社【225】によれば、後続直進バイク(以下①)の過失が20%、進路変更四輪車(以下②)の過失が80%となります。
②については、進路変更の際、第1車両通行帯を進行する車両の進路を妨害しないようにすべき注意義務を怠った過失が認められます(道路交通法26条の2第1項及び第2項)。
①については、前方を注視し、第2車両通行帯を進行していた車両が進路変更することを予測すべき義務があったが、それを怠った過失が認められます。
しかし、東京地裁令和2年1月30日判決は、具体的事実を考慮して、①が60%、②が40%としました。
2 東京地裁令和2年1月30日判決
事案は、①は②が進路変更をした直後にバランスを崩して転倒し、滑走し、②に後方から接触したというものでした。
裁判所は、第1に②は進路変更前に左ウインカーを出していたこと、第2に②が進路変更を開始した時点で①と②の距離が離れていたこと、第3に②の進路変更は交差点内に右折待ちの車両があったからなされたものであり、①は②の進路変更をそれなりに予想できたこと、第4に①は過去にバイク事故を5回起こしていたので、②の動静を注視して適切に制動措置を講じていればバランスを崩して②に接触することはなかったことを考慮し、①が60%、②が40%としました。
なお、本事案は、目撃者がおり、事故の2週間後に実況見分が行われていました。