1 大阪地判令和3年3月25日
高次機能障害を否定した最近の裁判例である、大阪地判令和3年3月25日(自保ジャーナル2095号)についてです。
まず、歩行者の対面信号が赤色か青色かが争点となりました。裁判所は、事故当日一時間以内に行われた実況見分における相手方(バイク)の指示説明、相手方は裁判でも一貫して実況見分の指示説明と同じ供述をしていること等を考慮して、歩行者は赤信号で横断したと認定しました。このように、裁判所は事故状況の認定に際して実況見分調書の記載を重視することが多いと思われます。
次に、本判例は、損害保険料率算定機関が高次機能障害が残ったとし後遺障害等級9級と認定したにもかかわらず、高次機能障害を否定した上で後遺症はないと判断したのが特徴的です。その理由としては、原告が事故後も仕事をしていたこと、原告の配偶者の陳述書の信用性について、原告とは生活拠点が異なり日常的に顔を合わせていたわけではないことから信用性が乏しいとされたこと、原告は当事者尋問で支障があると供述したことは高次機能障害でなくてもあり得ることなどが挙げられていました。
2 名古屋地判令和3年4月13日
ところで、高次機能障害が問題となるケースにおいて、原告側は日常生活動作ができないことの証拠として、同居者の日常生活状況報告書や、本人の陳述書、介助の様子を撮影した動画を提出しますが、これらの信用性が争われることが多いです。
この点、被告側が事故後の原告やその家族の行動を記録したDVDを提出し、原告側の提出証拠の信用性が否定された事例もあります(名古屋地判令和3年4月13日・自保ジャーナル2097号)。