1 はじめに
成年後見人に親族の方が選任されており,かつ成年被後見人の財産が多額の場合,弁護士などの専門職が成年後見監督人に選任されることがあります。今回は,親族成年後見人が成年被後見人の財産を横領したケースにおいて,成年後見監督人が善管注意義務違反による損害賠償請求訴訟を提起された事例を紹介します。
2 名古屋高判令和元年8月8日
この事案では,親族後見人が横領した金額は合計5000万円ほどでした。
横領がなされていた期間は約3年間でした。
ここで,年1回,家裁に定期報告をしていたのに,どうして横領が発覚しなかったのかという問題がでてきます。
この点,親族後見人は,通帳の写しのコピーを切り貼りして作成したり,提示した通帳原本についても変造するなど横領行為が発覚しないよう細工をしていたとのことです。
原告側は,本件の成年後見監督人(司法書士)が通帳の写しだけでなく原本をしっかり確認していなかったゆえに善管注意義務に反すると主張しましたが,原審,高裁ともに,結論として、同義務には反しないとしました。
3 まとめ
弁護士が成年後見監督人に就任するケースはよくあります。
本件は、成年後見監督業務に限らず,原本はしっかり確認しなければならないことを改めて痛感させられる事案でした。