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弁護士コラム:【民法改正】差押えと相殺

2021.05.11
1 無制限説の明文化

銀行Aは、事業者Bに貸金債権を有していたところ、事業者Bが返済期限を徒過したため、事業者Bが事業者Cに対する売掛債権を差し押さえたとします。差押えの時点で事業者Cも事業者Bに対して売掛債権を有していた場合、事業者CはBに対する売掛債権を自動債権として相殺できるかが問題となります。

改正前はいわゆる制限説と無制限説が対立していました。例えば事業者Bの事業者Cに対する売掛債権の弁済期が5月20日、事業者Cの事業者Bに対する売掛債権の弁済期が5月30日の場合を考えます。制限説に立つと事業者Cは相殺が制限されます。相殺を認めれば、事業者Cは事業者Bに対する買掛金の弁済期5月20日を徒過して、事業者Bに対する売掛金の弁済期5月30日に到来してから、相殺することになります。制限説はこのような事業者Cの相殺に対する期待は保護に値しないとするわけです。一方、無制限説に立てば、事業者Cは相殺を制限されることはありません。改正法511条は1項で無制限説を明文化しました。

2 無制限説の拡張

銀行Aが事業者Bに対して貸金債権を有していました。事業者Cは事業者Bから委託を受けて銀行Aとの間で保証契約を交わしていました。事業者Bが支払不能となり破産開始決定が出て、破産管財人Dが就きました。事業者Bは銀行Aの求めに応じて保証債務を履行しました。事業者Bは事業者Cに対して売掛債権を有していたところ、破産管財人Dが事業者Cに対して売掛金の支払いを求めてきたとき、事業者Dは事後求償権を自動債権として相殺することができるが問題となります。これは最高裁判例の事案になりますが、相殺は認められるとされています。

では上記事例について、銀行Aが事業者Bの事業者Cに対する売掛金を差し押さえた後、事業者Cが銀行Aに対して保証債務を履行したとします。この場合、事業者Cは事後求償権を自動債権として相殺できるかが問題となります。

改正前は差押えの時点で事業者Cが事業者Bに対して債権を有していることが前提であり、差押えの時点で債権発生原因が存在していたにすぎない場合は問題とされていませんでした。

もっとも破産手続は債権者の個別執行権を奪って債権者平等を貫徹させる手続です。相殺は債権者平等を害して優先弁済を認める制度なので、破産時と、破産に至ってない平常時とでは、前者の方が相殺は制限されるべきです。ところが前述した最高裁判例では破産時において相殺が認められているので、平常時においても同じ場面で相殺が認められるべきです。そこで改正法511条2項では、破産場面と足並みを揃えるべく、差押えの時点で債権発生原因が存在していれば第三債務者の相殺を認めることにしました。

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