1 はじめに
過去に個人再生手続を行い、認可された再生計画案どおりに返済されていた方が、自己破産手続を行う場合の注意点を説明します。
2 民事再生法190条
例えば、再生計画案どおりに返済していたAさんが、親族の連帯保証人となり、その親族が自己破産手続をすることにより連鎖的に自己破産手続をするとします。再生計画案では5社に対する400万円の借入れが100万円に圧縮され、5年で100万円を返済していた矢先、3年目で自己破産手続をすることになったのです。
この場合、Aさんに自己破産の開始決定が出ると、再生計画案で圧縮された再生債権は原状復帰します。例えばS社の100万円の借入れが個人再生により20万円に圧縮され、Aさんは計10万円返済したとします。この場合、破産開始決定により、当初の再生債権100万円から再生計画により返済額10万円を除いた額である90万円が原状復帰することになるのです。このことについて民事再生法190条によれば「再生計画の履行完了前に、再生債務者について破産手続開始の決定又は新たな再生手続開始の決定がされた場合には、再生計画によって変更された再生債権は、原状に復する。ただし、再生債権者が再生計画によって得た権利に影響を及ぼさない」とされています。