弁護士コラム:【交通事故】自賠責保険に入っていない場合~政府保障事業

1 はじめに

車両を運転する者は自賠責保険に必ず加入しなければなりません。
ところが,加害者が自賠責保険に加入していないなどにより、被害者が自賠責保険から保険金を受け取ることができないことがあります。
この場合,被害者は、国(国土交通省)の政府保障事業から,保障を受けることができます(自賠法72条)。
そこで,以下では,政府保障事業についてご説明します。

 

2 政府保障事業の対象事故

第1に、加害者を特定できない場合です。例えばひき逃げの場合です。

第2に、加害者が自賠責保険に加入せず運転して交通事故を起こした場合です。例えば自賠責保険が期限切れにより無保険になっていた場合です。

第3に、加害者が車を盗んで運転して交通事故を起こした場合です。

 

3 政府保障事業の性質

被害者の国に対する保障請求は、損害賠償請求権ではなく、自動車事故の被害者保護の観点から特別に創設した公法上の権利とされています。よって政府保障事業は社会保障的な要素が強い制度といえます。

なお、被害者が労災保険から損害の補填を受けるとその全額が控除されます(自賠法73条1項)。
また,保障請求権は3年で時効となるので注意が必要です。

 

4 政府保障事業の内容

まず、被害者が国から受け取ることができる補償は、自賠責保険で支払われる金額と同額となります。つまり、傷害による損害は限度額が120万円、後遺障害による損害は等級により限度額が定められています。例えば後遺症の等級が14級の場合は75万円が限度額になります。

また、国は政府保障事業の支給決定以外の業務を損保会社に委託しています。そのため,被害者は国から委託を受けた損保会社に対し政府保障事業の利用申請を行うことになります(①)。
そうすると,損保会社は損害保険料率算出機構に調査を依頼します。
その後、損害保険料率算出機構は調査結果を損保会社に報告します。
損保会社は調査結果を国に報告し、国はその調査結果をもとに支給決定を出します(②)。
損保会社は,国の支給決定に基づき被害者に補償金を支払うことになります(③)。

なお、被害者は、国の支給決定に不服がある場合、異議申立てを行うことができます。

このような過程を経て被害者は自賠責保険相当の補償を受けることができるわけですが、申請してから着金するまで相当な期間を要すると言われていますので、注意が必要です。

例えば、大阪地裁令和3年10月7日(自保ジャーナル2113号)では、①が平成31年1月8日、②が令和元年6月28日、③令和元年7月11日となっています。このように、申請から着金までに約半年かかっていることになります。

 

5 裁判について

裁判所は、損害額の認定に際して、政府保障事業の算定結果に拘束されないとされています(最高裁平成21年12月17日)。そのため、例えば、被害者は、政府保障事業が後遺障害非該当と認定したことに対して、後遺障害等級14級9号に該当するとして、国に対して訴訟提起することは可能です。もっとも補償額には限度額があります。

 

6 最後に

以上、政府保障事業について説明しました。
交通事故でお困りの方はイーグル法律事務所までご相談ください。

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執筆者

弁護士法人イーグル法律事務所 代表弁護士
神戸・明石を拠点に、誰もが気軽に相談できる法律事務所を目指します。
特に年間200件以上の相談実績がある「交通事故」問題や、「相続・遺言」「債務整理」の分野に豊富な経験と実績があります。その他、企業法務から離婚、刑事事件まで幅広く対応。専門家の立場から、皆様のお悩みを解決するために正確で分かりやすい情報をお届けします。

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